俺と隣の天の邪鬼

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「そこはだな、世知辛い世の中の疲れを癒す、ハッピーエンドに繋げようぜ? この世界は理不尽な不幸に溢れすぎてる」  それはもう胸焼けがするくらいに。 「違うよ。理不尽だから、ハッピーなんだよ」  ……なんてこった。根本的な見解の相違だった。理不尽が幸せだと? 俺には理解不能だ。なんてひねくれた子なんだ。  ここで巧は間をとった。俺も何も返せなかった。沈黙。ばしゃばしゃ。うっかり水溜まりを踏んでしまった。 「だって、理不尽だからこそ、僕たちは前を向くんだよ?」 --不幸なんて、いくらでも吹き飛ばせるじゃないか。  そう言って巧は振り返った。これまでみたことないような、イイ顔をして。クサいこと言いやがって。聞いたこっちが恥ずかしくなってきた。巧はまた振り返り、少し早足になった。  理不尽だから前を向く、か。夏の始まりに、隣の天の邪鬼を憎めない理由が、ちょっとだけわかった気がした。
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