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ーー放課後ーー
「家永さ~ん」
昇降口のところにいる電子に誰かが声をかけてきた。
「あ、金賀君」
電子が振り返ると後ろから手を振りながら亜留がやってきた。
「一緒に帰らないか?
乗せてくよ」
車で送迎してもらっている亜留はにんまり笑い電子を誘う。
「あたし、歩いて帰る」
電子はぷいっとそっぽむき、亜留にお構いなしに歩きはじめた。
「んじゃ、俺も」
電子を追い掛けるように亜留が後ろからついて来る。
「ねぇ、無理して歩かなくていいのよ」
歩きながら電子は亜留に言う。
「ん、別に無理してないよ」
しれっと電子に歩調を合わせながら亜留がついてくる。
「ふ~ん」
振り返らずに電子は返事をする。
「ね、家永さん。
携番教えてよ」
携帯電話を取り出し亜留は準備する。
「生憎だけどあたし持ってないの」
チラッと亜留を見て電子は答える。
「そうなんだ。
今時珍しいね~」
亜留は残念そうに携帯電話をしまった。
「今のとこ必要ないからね」
すまして電子は言う。
「そっか、そっか」
電子の言葉に亜留はうんうんと頷く。
「古い物も大事に使えば長く使える。
まだ使えるのに捨てられた物達は涙を流している……」
意味深に電子は呟く。
「家永さん?」
電子の言葉に亜留は首を傾げた。
「……さようなら」
謎めいた言葉を言い残し、電子は走り去った。
「…………」
走り去る電子が見えなくなるまで亜留はずっと見つめていた。
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