電子先生のお勉強。

3/10
前へ
/10ページ
次へ
ーー放課後ーー 「家永さ~ん」 昇降口のところにいる電子に誰かが声をかけてきた。 「あ、金賀君」 電子が振り返ると後ろから手を振りながら亜留がやってきた。 「一緒に帰らないか? 乗せてくよ」 車で送迎してもらっている亜留はにんまり笑い電子を誘う。 「あたし、歩いて帰る」 電子はぷいっとそっぽむき、亜留にお構いなしに歩きはじめた。 「んじゃ、俺も」 電子を追い掛けるように亜留が後ろからついて来る。 「ねぇ、無理して歩かなくていいのよ」 歩きながら電子は亜留に言う。 「ん、別に無理してないよ」 しれっと電子に歩調を合わせながら亜留がついてくる。 「ふ~ん」 振り返らずに電子は返事をする。 「ね、家永さん。 携番教えてよ」 携帯電話を取り出し亜留は準備する。 「生憎だけどあたし持ってないの」 チラッと亜留を見て電子は答える。 「そうなんだ。 今時珍しいね~」 亜留は残念そうに携帯電話をしまった。 「今のとこ必要ないからね」 すまして電子は言う。 「そっか、そっか」 電子の言葉に亜留はうんうんと頷く。 「古い物も大事に使えば長く使える。 まだ使えるのに捨てられた物達は涙を流している……」 意味深に電子は呟く。 「家永さん?」 電子の言葉に亜留は首を傾げた。 「……さようなら」 謎めいた言葉を言い残し、電子は走り去った。 「…………」 走り去る電子が見えなくなるまで亜留はずっと見つめていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加