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ーー丑三つ時ーー
廃園となった古い幼稚園に、何やら物陰が見える。
そこには使われていない粗大ごみとして出されていた家電達が集まっていた。
「なぁ、冷太。
今日さ、見慣れない携帯いなかったか?」
ホースに穴の空いた掃除機がドアの壊れた冷蔵庫に尋ねた。
「そう言えば……。
新入りかな?」
冷蔵庫はドアをパカパカさせながら言う。
「でも、キレイだったぜ?」
掃除機はホースをグルグル回した。
「まぁ、電子先生が来たらわかるわよ」
二人の話を聞いていた画面にヒビの入ったテレビは言う。
「そうだな」
テレビの一言に二人は納得する。
「はいはい。
皆さん静かに~。
授業はじめるわよ」
騒ぐ家電達の前に現れたのはあの家永 電子だ。
電子が現れた途端、好き勝手やっていた家電達が静かになった。
「……の前に。
新しいお友達紹介します」
電子は隣をチラリと見て合図する。
「金賀携Pです。
よろしくおねがいします」
電子の隣にはまだ新しい携帯がちょこんといた。
「金賀ってこの間も来なかった?」
ある家電がボソリと言う。
「僕は金賀携R。
君も亜留に捨てられたの?」
家電達の中からまた別の新しい携帯電話が現れる。
「……うん」
携Pは悲しそうに言う。
「何だって!
君達、まだまだ若いじゃないか!」
「金賀 亜留って許せないな」
「一体どんな男だ!」
家電達は亜留に対し怒りを顕わにしている。
「金賀 亜留。
名は体を現す通りに金持ちのボンボンで新しいものに目がない男だよ」
家電達の言葉を聞き電子は補足するように言った。
「それで玩具のように取っ替えひっかえに携帯を買うんだな」
「いけ好かないな」
「僕らを馬鹿にしてる!」
「許せない!」
「そうだ!
そうだ!」
更に家電達の怒りはヒートアップする。
「静かに!
静かに!」
騒ぐ家電達を電子が制止する。
「電子先生は悔しくないのかよ!」
家電達は電子に問う。
「……あたしも悔しいよ。
だからちょっとぎゃふんと言わせましょう。
今から課外授業開始よ」
電子はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「課外授業?」
電子の言葉に家電達は疑問符を浮かべる。
「ええ。
任せなさい!」
どんっと電子は自分の胸を叩いた。
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