己嶋 要先輩

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ここは剣術部の道場、『神鳴館』というところです。 何となくですが、とてつもなく大きくて力強い、神聖な感じがします。 あっ、先輩にお礼しなればいけません。 「場所を変えて下さって、ありがとうございました」 「気にしないでいい。ここなら誰かに聞かれる事もない。人払いは済ませてある」 人払いですか。 なんだか凄いです。いつの間にやったんでしょうか。 「まあ、普通は驚きますよね。要は生徒会長と仲良しですから、多少の無理は聞いて貰えるんです」 そう説明してくれた皆守先輩。 学校で一番偉い方と、仲良しさんですか。 素敵です。 あっ、話さなくてはいけません。 危なく忘れかけてました! 「えと、私と庵ちゃんたちは、本当に小さい頃からの幼なじみなんです。 遊んだり、何かしたりするのも一緒でした」 板張りの床にきちんと正座しながら、私は私の想いと決意を、要先輩と皆守先輩に打ち明けます。 「中等部から、庵ちゃんたち3人は剣道部に入ったのですけど、そこから少しずつ、私の中でトゲみたいなのが、引っ掛かり始めたんです……」 「トゲ?」 私の抽象的な発言に、要先輩が首を傾げてしまいました。 うう、上手く伝えられない自分の言語力の貧困さが、もどかしいです。 「あぅぅ、す、すみません、すみません!!変な例えですよね、えと、トゲと言いますか……その、えと……」 「お、おい、落ち着け……。だ、大丈夫だ、なんとなく解るから!」 「す、すみません……」 見かねた要先輩から逆に宥めてもらい、 ああ、もう、なんと情けない事でしょうか。 「大丈夫ですよ、今日子さん。そんなに緊張しなくても、要は取って食いはしませんから」 朗らかに笑った皆守先輩。 背中までの長い髪も綺麗で、本当に女性みたいです。 「恐いのは顔だけで、中身は彼女に振り回されるヘタレですから」 「ぅオイッ!なに、1年に吹き込んでるんだ、皆守!て言うか、誰がヘタレだ!」 皆守先輩……。 美人なのに、なかなか黒いです。 でも、要先輩と皆守先輩の、そんな楽しそうな掛け合いに、私は思わず笑みが溢れました。
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