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「……私は、寂しかったんです。庵ちゃんも尭も、秋も、自分の目標に真っ直ぐに向かっていて、その姿はとても素敵で眩しかったですけど……」
それは、あまりにも眩しくて、同じ場所にいたのに、いつの間にか、みんなの背中が遠くなっていました。
「何処かで、私だけが、ずっと後ろに取り残されてしまったようにも、思ってしまって……」
明るくて、前向きな庵ちゃん。
落ち着きがあって、頼りになる尭。
しっかり者で行動力のある秋。
3人とも、私にはない『素敵』を持っています。
運動も勉強も普通で、何かに誇れるモノがない私は、皆さんと一緒にいて良いのかとも、思いました。
だけど、庵ちゃん達から離れたくなくて、離されたくなくて、いつからか、前へ向かって走って行く3人の背中を、私は必死で追い掛けていたんです。
「皆と一緒の部活をして、一緒の時間を過ごして、少しでも、庵ちゃん達と同じ場所に立って、私も強くなれたら……」
なんて甘えた考えでしょう。
いつの間に、私はこんなに弱くて、駄目な人間になってしまったのでしょう。
「少しでも、庵ちゃん達の強さに近付けたら、この心の痛みもなくなるかもしれない……なんて、あまりに不純な動機ですよね」
真面目に取り組んでいる先輩たちからしたら、お怒りになるような、甘えた考え方です。
それでも私は、決めたんです。
「こんな不純な動機の私に、お怒りかもしれません。どんなお叱りの言葉も受けます!でも、それでも私は、皆と同じ場所で強くなりたいのです!!」
ポロポロと、両目から涙が溢れ落ちて来ました。
こんな場面で泣くなんて、狡すぎです。
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