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礼儀正しく一礼して、『神鳴館』を後にした黒姫 今日子と言う1年の女子を、オレは道場の扉の前から、暫く見送っていた。
「気になりますか?彼女」
背後に立った皆守が、眼を細めながら笑い訪ねて来た為、オレは溜め息混じりに応える。
「……礼儀正しいし、人の話をちゃんと聞く。ちょっと天然っぽい所はあるが、良い子だ」
だがと、オレは黒姫と話していて感じた違和感を口にした。
「自分に対する評価が、ことごとく低い。誰しも、そうゆう部分はあるが、あの子は少し度を越している」
言葉の節々から、そういった感情が伝わって来た。
「そうですね。幼なじみの方たちと比べて、卑屈になっていると言う訳ではなさそうですし」
あの子の眼は、決して卑屈になっている眼じゃない。
なのに、何故あそこまで、自分に対して低い評価をつけるのか。
「……卑屈になる以外で、自分を低評価する理由は2つ。自分が嫌いで仕方ないか、もしくは……」
「周囲から、そう思わせざるえない評価を受けたか、ですか?」
オレの言わんとしている事を引き継いだ皆守の言葉に、思わず眼を見張るが、皆守は相変わらず眼を細めて笑う。
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