―招待状―

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「しかし、週末に女3人で居酒屋ってのも淋しい限りだよねぇ……」 麦にするか芋にするか、次に注文する焼酎を決めかねている沙織が、メニューとにらめっこしながら呟いた。 「本当だよねぇ……って、あんた結婚してんじゃん」 梅酒を片手に、めぐみが沙織を軽く睨らんだ。 「そう言えば、今日旦那さんは?」 日本酒を美味しそうに一口飲んだ後、法子が沙織にそう聞いた。 「家にいるんじゃない?知らない……どうでもいいよ……」 膨れっ面でそう言ってから、沙織は呼び出しボタンを軽く押した。 成田沙織、桜木めぐみ、光本法子の3人は、中学の頃からの友人で、気心が知れた仲だった。 「あんた達、また喧嘩したの?」 呆れ顔で、めぐみがため息をつく。 「だって、予定してないのにいきなり会社の同僚とか家に連れてきて、挙げ句の果てに、なんかつまみ作れだよ?いい加減にしてって感じ……」 「あんた、愚痴言う時も常に笑顔だよね?怒ってんのか、楽しんでんのか……」 そう言って、めぐみは小さく笑った。 二人がそんな話をしている中、始めに旦那の話をふった法子はと言うと、基本的に興味が無いのか、大好きな日本酒をぐいぐいと飲んでいた。 「ちょっとトイレ行ってくるね」 めぐみが席を立つと、「私も」と法子も一緒に立ち上がった。
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