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僕は小さなおっさんを見た。
よく、テレビで芸能人達が言っているアレの事だ。
中学生の僕が風呂に入っている時のコト。
シャワーを浴びていたら、突然チャポンって音が聞こえた気がして、湯船を見たら居た。
全裸の小さなおっさんが、湯船の中で溺れそうになって必死にもがいていたので殺した。
おっさんの頭は禿げ上がり、手足と胸板はガリガリのくせに、腹だけはだらしなく垂れている。嫌悪感の塊のようなおっさんだった。
とりあえず気味が悪いので摘まみ出そうとしたら、おっさんは僕の指にしがみついてきた。
何しろおっさんは全裸だから、ガリガリの腕も、だらしないお腹も、おっさんの下腹部の小さなおっさんも僕の指に密着している。
……気持チワルイ。
僕は咄嗟に振り払い、おっさんは浴槽の壁に叩きつけられる。ぐったりしてぷかぷか浮かんでいるおっさんは、もう虫の息だった。
だから沈めた。それでも少し物足りなくて、浴槽の底で潰した。
イモムシとカメムシを一緒に潰したような、奇妙な感触。
ゆっくりとお湯から手を引き、黙って風呂を出た。石鹸で何度も手を洗っていると、家族に怪しまれた。次の日の朝、浴槽を覗くとおっさんは居なかった。
僕はほっとして、3日も経てばそんな事はすっかり忘れてしまった。
でもその頃から、何故だか風呂とおっさんが嫌いになった。
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