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ずっと忘れていたのに、どうして今更……。
その理由は直ぐに分かった。鏡に映った私は、あのときのおっさんにそっくりだった。
口から乾いた笑いが零れる。
あの小さなおっさんは何者だったのだろう? 沢山いるのだろうか? そうだとすれば、彼らは普段から何をして生きているのだろうか?
小さなおっさんになりたい。
大きなおっさんが、小さなおっさんになる事を望んでいる。
神よ。私を綺麗な鳥に変えるよりずっと簡単だろう?
冷たいシャワーは止まらない。全裸の私は、だらしない身体を引っ提げて立ち竦んでいる。
莫迦莫迦しい妄想は止めて、素直にシャワーを止めた。
明日も仕事がある。鞄ごと無くした企画書を作り直さなければ……。
そう思って一歩下がると足元に奇妙な感触を覚えた。背筋をなぞられるような不快感、私の足の裏で未だに蠢くソレ。
既にこの浴室の主となったゴキブリだった。
私は飛び上がるようにして足を上げた。その拍子に足が滑り、頭を壁にぶつける。目の前を星が飛び交う中、身体を支えようと手を伸ばすと何故か躓いた。そして頭から浴槽にダイブした。
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