小さなおっさん

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 ……………。  ………………………。  …………オカシイ。  我が家の風呂はこんなにも深かったか?  私は頭のてっぺんから爪先まで、熱いお湯の中に浸かっていた。手足をバタつかせても、それが何か固体に触れる事はない。  いい加減に息が苦しくなって、身体を捻ったりしてもがいていると、ようやく水面に顔が出た。 息を大きく吸い込み、そしてア然とした。  ……何もかもが巨大になっている。いや、私が小さくなってしまったのか?  あまりの衝撃に手足を止めてしまう。すると直ぐに沈んでしまったので、慌ててもがく。  その時、突然私の腕に何か柔らかいが形ある物が触れた。必死だった私は思わずそれにしがみつく。  何しろ私は全裸だから、正体のわからないそれにだらしない腹や私の下腹部の小さな私も押し付けている状況だが……えぇい仕方ない!  死ニタクナイ……!  だが、虚しくも私の体は何か強い力で引き剥がされ、しばらく宙を待った後、壁に勢いよく叩きつけられてしまった。  再びお湯の中に落ちる。身体に力が入らない。ぷかぷかと浮かんでいるので窒息死はしないで済みそうだったが、このままではいずれ死ぬだろう。口の端から血が流れ、直ぐに熱い湯がそれを流す。
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