序章 unknown

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 煌々と輝く満月が相羽の空に浮かんでいる。  漆黒の空に散りばめられた星たちもその輝きに負けじと光を放つ。  満点の星空。  海と山に囲まれ田舎町と揶揄される相羽ではあったが、それゆえ都会ではなかなかお目にかかれない景色がそこにはあった。  近代化の波もきていないことはない。この街に長く住んでいる者たちからすれば瞬く星の量は減っているのかも知れない。しかし都会よりも明らかに光量は少なかった。    ――おかげでおかしなものもよく見える。  相羽山――通称、胸山。  М字を描くように膨らんだ二つの山の頂に、天体観測ドームが二基、まるで銀色の乳首のように設置されていることからそう呼ばれている。  そこは海を望む絶好の夜景スポットとしても有名で、頂上付近にある観測所の駐車場は夜になると夜景を見にきた車で埋めつくされる。お目当ては夜空に散りばめられた星と――。 「お、綺麗な円盤型。あれはアダムスキー型っていうんだっけ?」  ――UFOである。
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