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観測所へと続くドライブウェイの中腹、そこに地元の人間しか知らないような脇道がある。
生い茂った草木を潜り、その脇道を抜けると今はもう使われていない公園がひっそりと存在している。そこからの景色も観測所から見る景色と遜色がなく、知る人ぞ知る穴場スポットとなっていた。
遊具は錆ついた鉄棒と砂場だけ。事故が起き、公園の閉鎖の理由となったブランコは撤去され、手入れのされていない公園はどこか荒涼としている。外灯もなく光源は月明かりしかない。
眼下に見える相羽の街は暗く、暗い海から吹く肌寒い潮風にさらされている。
そんな公園のベンチに一組の男女がいた。
夜空を走った円盤型の光をまるで流れ星を見るくらいの感動で見送った男は隣で寒そうにしている女に続ける。
「この街に宇宙人がいると思う?」
女は数瞬の沈黙ののちに答える。
「この街には、いないと思う。だって逢ったことないもの」
「でも宇宙人はいるだろ? 現にUFOがよく飛んでるし。あんなものを地球人が運転しているとは思えないよ」
「うん」
「俺はいると思う。少なくとも日本には。それに、」
「それに?」
「いるとしたらこの街だよ。こんなにUFOと関係してる街って世界中にここだけだろ?」
「そうかも知れないね」
女の返答を聞くと、男はおもむろに立ち上がり女の前に立った。月明かりを背負った男が影だけの存在になる。
「なぁ」
「ん?」
「――俺が宇宙人だったらどうする?」
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