ただ君さえいれば良かった

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  『ただ君さえいれば良かったのに』 何もない空を仰ぎ、呟く。 こんなことをしても君に届かないのは知ってるよ。 大丈夫、わかってるから。 風に踊る草木の歌が聞こえる。 深い溜め息を吐いて、自嘲気味に笑って。 まっさらな地面に寝転んだ。 瞼を閉じると、頬に涙が伝う。 この涙はいつか、名のない花の糧になるでしょうか? だとしたら、この涙も無駄ではないと言えるのでしょうね。 大地に1人。 この大きな世界にいるのは私ただ1人。 そんな錯覚に陥った。 闇を切り開き、光を見た先には、涙で滲んだ青が視界いっぱいに広がっていた。 涙とともに、この想いを流してしまおう。 そう思ったのに。 君への想いは、溢れるばかりでした。 手を伸ばして掴もうとしたモノは何? それさえも、忘れてしまった。 いつか、手に入ると信じて。 また、青い空に手を伸ばした。  
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