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届かない
伸ばした手。
触れる前に君は消えた。
君を求めて空を切った手は、しばらく宙をさ迷った。
行き場のない手を強く握って胸に引き寄せた。
――触れなかった。
最期のぬくもり、忘れぬように。
座り込んで、自らを抱き締めて。
誰の名前を呼ぼうとしたの?
喉がかすれて、声が上手く出ないよ。
流れる涙、震える身体。
全てを押さえつけて。
ムリヤリ笑おうとして、失敗した。
――バカだね。
そんなの、わかってるよ。
どうして、上手に笑えないんだろう。
さいごなんだから、笑ってあげたいよ。
ねぇ、君は――…。
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