9人が本棚に入れています
本棚に追加
庭へ出ると、あふれだすように一面の花々が才円を迎えてくれた。
その中央には背の高い木が大きな影を庭中に落としていて、ヒンヤリとした風が才円の頬を撫でていく。
時折、遠くから、かすかにこの店の呼び込みの声が聞こえて来るが、それ以外は時が止まったかのように静まり返っていた。
才円は、とにかく愚霊が忍び込んだ倉を調べてみたかった。
そこに、何か事件の手掛かりがあるかもしれないと思ったからだ。
「さいえんすの捜査は、やっぱり現場検証が基本だろうからね……」
才円はつま先立ちしながら、とにかく倉のある場所を探して回った。
すると、庭を大体一週した頃、土を踏み荒らした複数の足跡が、アリのように一列にどこかへ向かっているのが目に入った。
(これだ!)
最初のコメントを投稿しよう!