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月が出ないこんな夜は、墨で塗りつぶしたような真っ黒な闇だけがどこまでも広がっている。
まだ電灯や車などが発明されていない江戸の夜は、まるでこの世の終わりのように暗く静かで、なにか恐ろしい。
たとえ、闇の中から妖怪がひょいと一つ目を出して「やあ」と言っても、巨人の巨木のような毛だらけの足が、目の前に立ちはだかっていても、ありそうだとつい納得してしまうだろう。
だけど、今夜はそんな摩訶不思議な事が、実際に起ってしまったのだ。
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