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校門から歩いていくたくさんの生徒たちを、雛川匡介(ヒナカワ キョウスケ)は窓辺からじっと見つめていた。
――家族の元に帰るというのは、そんなにいいことなのだろうか?
両親が大きな企業で共働きだったため、幼い頃から身の回りのことは自分でこなしていた匡介は、帰省の意味や価値を見出だせないでいた。
小学校低学年の頃から家で一人。
たまに友達の家に夕飯を誘われたりもしたが、料理から洗濯から何まで自分の力でこなした。
当然両親との思い出も多くはなく、それも匡介が家に帰らない理由の中で大きなウエイトを占めていた。
その点で、彼がここ『黒嶺高校』を選んだのは悪くない選択だったと思っているが、やはりたまに帰らなくてはならないことが不満だった。
黒嶺高校は地元でも有名な進学校だ。
自由な校風と伝統ある歴史から人気があり、毎年県外からもたくさんの入学者が訪れる。
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