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匡介のいる『泉耀館』は、黒嶺高校の敷地内にある歴史ある寮だ。
黒っぽい木材で建てられた築三十年程のこの建物は、二、三年生の寮となっている。
一年生は校舎の隣にある古いアパートのような所で暮らすのだが、二年生に進級すると同時にここ、泉耀館に移ることが出来る。
ただ、匡介がこの泉耀館で冬休みを過ごす決心をした理由の中には、伸と遥希がここに残るというのもあった。
森田伸(モリタ シン)と最初に話したのは、匡介が進級して間もない二年生の一学期、四月のことだ。
その時彼は、前の席の友人と雑談を楽しんでいた。
そしてなぜだか話は『泉耀館』のことに。
あれほど歴史を感じさせる名前と雰囲気を感じたことがあるか。
――俺は感じるぜ。
あの時、森田伸は割と離れた席からその言葉を投げ掛けてきた。
そしてこう続けた。
――お前は感じないんだろう、匡介?
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