カゲロウ

4/21
前へ
/191ページ
次へ
どこか挑発的な彼の言葉に、匡介は友人と顔を見合わせ呆気にとられながらも、頭の中で素早くリアクションを選んだ。 1、へぇどんな感じなんだとせせら笑う 2、無視する 3、話を聞いていたことについて怒ってみる 脳内でこの三つの選択肢を吟味した匡介は、この中のどれでもない反応を示した。 眉をひそめ、「分からない」というような反応を示した後、再び友人と向き合ったのだった。 友人との雑談を中断させず、挑発的なクラスメートとのトラブルを避けるという意味では、まずまずの反応だったと思っている。 また、こんなこともあった。 六月末の体育祭のクラス対抗リレー。 四人の走者は、トラックに立ってバトンの練習をしていた。 ―匡介、バシッと渡してくれよ 匡介がなんで今まで伸と喋っていると、どこかむず痒い気持ちになったのかが分かった。 「なぁ、なんでお前はいちいち俺を名前で呼ぶんだよ。そんなに呼ばなくても俺に言ってるってことくらい分かる」
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加