カゲロウ

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それを聞いた伸は、スカッと笑ってこう言った。 ――悪い悪い。そっか。俺、お前の名前、好きなんだ 変な奴だと思いつつも、自分の持ち場に戻る。 ――おーい!始めるぞー! 第一走がバトンを振り上げて合図する。 伸の背中を見ながらバトンをその手に叩き付けたあの瞬間。 周りの景色がストップし、全てが永遠に感じられた――― 「―――おい。匡介、買い出し行くぞ」 気が付くと遥希が目の前に立っていた。 「あ、あぁ。悪い。伸は?」 「あいつなら部屋で寝てると思う」 千葉遥希(チバ ハルキ)は温厚で気のまわる男なのに、決して女々しくない貴重な男だ。 目立つタイプではないが、与えられた仕事は完璧にこなす。 この歳の人達にとっては、真面目はつまらない奴と同義語である。 それを理解しているからこそ、クラスメートたちは彼に小さな尊敬の念を抱いている。 そして畏怖も。
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