2撃

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(閖視点) 殺すころすコロス。 それしか頭にない。目の前の女を、兄を撃ったこの女を殺す。 後ろから、どさ、と何かが倒れたような音がする。 知らない。関係ない。目の前の女を殺す。それだけを考える。 でも…さっきまで聞こえていた兄の呻き声が聞こえない。振り返ると、兄が倒れている。 「…バカ兄……?」 返事はない 「……え、ちょ、………ちゃん?」 足が、止まる。 「え…なに?これ…」 足が兄の方へ向く。 「え、冗談だよね…?」 敵に、背を向ける。 「ふざけないでよ、お兄ちゃん…」 ピクリともしない兄を見て、それでも声をかける。 「ほら、起きてよ…お兄ちゃん…なにやってるの?アスファルトで寝るとか、本当にどうかしてるよ…ははは」 普段は兄のことを【バカ兄】と呼ぶ閖は、今【お兄ちゃん】、と呼ぶ。 普段は恥ずかしくて、言えないようなこと。 そんな言葉を口に出していることに、本人は気づかない。
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