道具屋~エレクシオン~

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――エレクシオン―― 俺はロラン。 十六歳。 この世界では、もう立派な働き手となる歳だ。 今日も農作物の世話をしないといけないが、面倒だからサボった。 この辺りで、俺を良く言う人は少ない。 何せ、仕事もせずに呆けているんだ。無理もない。 俺が何もしない理由は、目的がわからないから。 何の為に働くのか、理解できないからだ。 正直なところ、俺はこの世の中、全ての物が嫌いだ。 だから目的が掴めないのかはわからないが。 自然は嫌い。 そこに生きる動物達も嫌い。 勿論人々も嫌いだ。 空気、土、空。 あらゆる物に、俺は嫌悪感を抱く。 何故かは知らない。 でも嫌い。 漠然と、それだけ自覚していた。 とある日、いつものように畑仕事をサボっていた俺の前に幌馬車が見えた。 どうやら店のようだ。 売れているのかは定かでないが、かなりの品揃えだった。 日用品から、食品、農耕具、さらには家具まで。 こんな村に何を考えて出店したのだろうか。 「いらっしゃいませ」 二十代ぐらいの、店主らしき男がこちらに気づき、挨拶してきた。 それを無視して、商品に目をやる。 と、ある商品に目が留まった。 「エレクシオン………?」 そんな名前がつけられているのは、二つで一組になったモノクルだった。 モノクルとは、片眼鏡。 つまり、一つで充分なのだ。 「なぁ、店主。」 一応、店主に尋ねてみる。 「このモノクル、なんで二つで一組なんだ?」 「そちらの商品はとても変わった商品です。右目用には、自分の好きな物、左目用には、自分の嫌いな物のみが映るのです。」 「はぁ?」 到底信じがたい話だ。 しかし、嘘をついているようにも見えない。 ………でも。 「そんな物が、何の役に立つ?」 別に無くてもいいだろ、そんな物。 「確かに、あまり役には立ちません。この商品、とある貴族からの命令で作られた物なので。半分遊びのような物なんです。」 じゃあ売るなよ。 そう言いそうになるのを、何とか堪える。 「あ、そうそう。」 店主は何かを思い出したように俺に言った。 「このモノクル、『視る』事にあまりに特化したため、通常では目に見えない物が見えるようですよ。」 「目に見えない物?」 「はい。私にはわかりかねますが。」 適当すぎるだろ。 そんなよくわからない物を売っていいものなのか。 まあ、この辺
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