量子跳躍

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「はてな、何故俺は此処に立っているんだ?」 それは辺りを見回す。 多分自分にとって知らない世界だという事実に本能と思考が追い付けないため絶句しているのだろう。 それの姿は異様だった。 白と黒、そして冷たい鈍色のカラーコントラストに流線型の体躯(フォルム)。 翼と腕は別れ、脚は人間のそれに近い。 凛々しい顔立ちは何処ぞの龍好きを魅了する程きりりとしていてカードゲームの切り札級の龍に見劣りしない程格好良い。 まさに鉄の心臓(スティールハート)を具現化した様なずしりと重量感と素早く動けそうな姿のそれは、この世界には絶対に居ないだろう。 一通り辺りを確認し、平和だと確認すると翼を広げ飛び立つ構えをとる。 沈黙程すぐに崩れるものは無い。 どおぉん…という鈍い音が森中に響き渡る。 爆発音だろうか、黒煙がもくもくと勢い良く昇っている。 「硝煙…では無い様だが。しかし、火の無い所に煙は立たぬ…往く価値はあるか」 「『アームドアップ』フォトニクスウィング展開!!」 光の粒子と共にそれは、機械の鎧を装着し、光の翼を大空一杯広げ原因の場所へ飛び発っっていった。 それは知らない。 先程それがたっていた場所には、魔法陣が淡い燐光と共に消え去っていくのを。
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