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時は3月上旬。
私が紗由と学校帰りにとあるファーストフード店に寄ったときのことである。
私たちは一番奥の少し隔離されている席についた。
そしてご飯を買ってきてまた席に戻る。
「あんゆって好きな人とかいないの?」
紗由の突然の言葉に私は驚いた。でも私はこの時心に思う人がいた。
「ぁ、図星なの~?言っちゃえ言っちゃえ~。」
「ぇー、じゃあ誰だと思うー?」
そう私が聞くと、紗由はクラスのあらゆる男子の名前を挙げてきた。
「ぶっぶー。」
「えー、あといなくねー?ヒントヒントー。」
「んとねー、嫌われてるひとって言ったら分かるかなwww」
「ぇ......まさか井口...?」
「ぁはw」
井口....
本名は井口拓斗(イグチヒロト)井口はクラスでとてつもなく嫌われており、はぶられているような存在のやつだ。
「な、なんで!?井口なんかただの変態だよ!?」
学校のみんなはたいていこう言う。
でも私はこの時、井口のことをかっこつけたりしている気持ち悪いやつだとか、変態だとか、そんな人だと私は思っていなかった。
むしろ、そう、気軽にこんな自分に話しかけてくる井口が、私のなかで次第に大きな存在になっており、気が付けばクラスでは井口のことを目で追う自分がいた。
「みんなが言うほどね、井口は悪い人じゃないよ。」
「違う違う!やめたほうがいいよ!あんゆも趣味悪いなー!」
「えへー、でも紗由には言われたくないかなー。」
「なんだよぉ!あたしは面食いなのよぉ。」
紗由はよく、他クラスの男子の話をする。
そう、あの人まじいけめーん!だとか、そんな話を良くしてくる。
簡単に言えば、かなり真逆の正確なのかな、私たち。
「ま、あんゆがそんなに言うなら私も協力するけど、井口ねー....意外と優しいところはあるのかもね。」
「ありがと。」
「じゃ、今日はこの辺で帰ろっか、まぁでも今日はあんゆの話聞けてよかったー!」
「うちもなんかちょっとすっきりしたー!」
「また語ろーぜ!じゃあねー。」
「ぅん、ばいばーい。」
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