欲望の箱

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 それは「欲望の箱」と名付けられていた。  持って来たのは彼女の友人。  昼下がりにお茶しよう、と家へ来て帰り際に渡された。  黒い掌に乗る大きさの箱で、表にはインポートランジェリーのブランド名が記されている。  女性の身体のラインをとても綺麗に見せ、素材も妥協を許さないクオリティの高さで知られている下着は、どれもこれも溜め息が出るくらい綺麗だけれど、それはモデルが良いだけのこと。  お値段にも別の意味で溜め息が出ざるを得ない。  いつも眺めているだけのそのブランド。 「なあに」と問うと、「まあ、開けてみて」と言う。  友人はインターネットで実益を兼ねて買い物をするのが趣味というグラフィックデザイナーだ。  インターネット通販のデザインも手がけていると言った。 「アイデア出しに煮詰まった時とかに、研究も兼ねて、他のサイトで普通に買い物するんだけど。あなたにいいかな、と思って。ポイントもたまっていたから、ついで買いで申し訳ないんだけど、プレゼント」  ほらほら、開けてみて、と促され、言われるままに封を解く。  贈り物程度なら大した品ではないだろう、ノベルティか何かかな、と開けてみて、中に入っていたものは。  黒いレースでびっしり埋められたブラとショーツのセットだった。  このレースが、指先で触っただけでわかる肌触りがの良さで、質の高さはわかるけれど、まったく素肌を隠す目的を果たしていない。  黒い隙間を縫って、身体の見せたくないところまであけすけに見えてしまう。  特筆すべきはところどころにあしらわれたボタンとリボンだ。  どれもしっかり機能する。  カップの三角形に沿って小さく窓が仕切られた上や、ショーツの裏側にあしらわれているボタンを外したら。  どうなるか問う方が野暮というものだ。
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