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木枯らしの吹く初冬、ビルが立ち並ぶ街を歩いていた
大きな電光掲示板が映すのは最近起こった事件のニュース
この国は経済、科学、軍事ともに発展した大国ユートピア
「理想郷」の名を掲げるこの国には、表の顔と裏の顔がある
表は他の国の侵略も許さず、経済も潤った豊かな国
しかし裏では経済格差にのまれ行き場を失う者が足掻く世界
何とか普通の生活を送っている僕達のような人間は
そういった裏の世界から目をそらしながら日々を送っている
誰だって揉め事は嫌いだ、我が身が可愛いから
自分から事件に首を突っ込むような真似はしない
「なあ、ちょっと俺達とあそばねぇ？」
「やめてください…」
「いいじゃねえかちょっとくらい、ケチケチすんなよ」
そう…たとえ近くで女性がタチの悪い輩に絡まれていても
僕のような弱い奴にはどうすることもできない
でも、そう割り切っていてもこの心苦しさは耐え難い
本当は誰だってそう思っているはずなのに、世界は変わらない
僕はそれでも見て見ぬ振りをしてその場を離れた
また一つ、自分を嫌いになった
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