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「当時はそんな感じじゃなかったよね？坂下」
「うん、たぶん……」
だってあの頃本当に坂下くんは、
「まさかそれ。最近気づいたとか言っちゃう？」
そう言われてみればあの時。やっと合点がいったといった感じだった。
「……そうかも」
「やっぱあほでしょ、坂下」
「ちょ、それは言い過ぎ」
相変わらずノリちゃんは口が悪い。
だけど私もそう言いたいぐらいに、ほんと坂下くんって鈍感だ。
あの頃、女なんて興味ないっていう風に見えたのは、本当にそうで。
他に興味がある事があって、きっと彼にとってはそれが最優先だった。
案外坂下くんの思考回路は単純で、1番目以外は目に入らなくなる傾向にあるというのが最近になってわかったから。
「だってそうでしょ？あの頃気付いてればそんなことっ…―」
「ノリちゃん！」
もう一度ノリちゃんがあの言葉を言いそうで、慌てて止めにかかる。
もちろん今度はさっきみたいに感情的に言うんじゃなくて、本当に言葉を止めるだけの意味で。
「あ、ごめん」
ノリちゃんもうっかり言いそうになっちゃったという顔をする。
だから私は、自分にも言い聞かせるように、
「あの頃の坂下くんは、そんな認識がなかったから。だから、ああだったんだよ」
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