鈍色の荒野

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 週間の天気予報では週末は最悪だった。  月曜から金曜まで、晴れたり曇ったりの穏やかな日が続くが、一転して土曜の夜から雨が降り始め、日曜は雨……の筈であった。  しかし、今日の東京地方の天気は晴。快晴とはいえなくても、陽射しが影を作るくらいの陽気。予報の雨はしばらく来そうにない。  やはり天気は気紛れで、土曜の雨は金曜に繰り上がり、その分雨は土曜のお昼頃まで降り続いたが、夕方あたりから雨足も途絶え出し、夕焼けさえ見えた。  彼は今朝、朝一番の飛行機で羽田に向かった。朝靄にけぶる北海道の上空から眺める、霞のように脇を流れていく雲の切れ目から、あの辺りに自分の牧場があるのだろうかと思う間に、飛行機は上昇を続けて雲海を抜け、大地や海は見えなくなる。  何も、こんなに早く、張り切って上京することもなかったのに。我が事ながら、彼は唇の端で苦笑する。苦笑して、すぐに表情を改めた。  笑わなくなってどれくらいの時が流れただろうか。  離陸して直ぐに禁煙ランプが、しばらくしてシートベルト着用のランプが消える。  彼はサンシェードを下までおろしてシートベルトを緩め、後を伺いながら背凭れを倒して姿勢を崩した。  本当は機内でもしたいことは山ほどあった。  胸ポケットにある煙草や、あらかじめ前の座席のマガジンラックに差し入れておいた、分厚い、辞書のような本に手を伸ばして、止めた。  一旦開いた手帳もすぐ閉め、彼は膝の上で指を組み、居住まいを正して目を閉じた。
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