一刺し 親権者

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「何故、そんな無法空間だからって無秩序なことが平気で、しかも人前で堂々とできる?」  忠実的で正義感の強い青年、ちょっと全身がムキムキした筋肉質の固まりのような男性が怒鳴りだしたのだ。  お楽しみ中の陽灼け男は返答した。 「法律能力や政治能力が無力化したザマを転送中に見たからに決まってるだろう?俺、よくマスコミに関係する情報が好きで、人を見た瞬間にどこで何してる業界とかすぐ判るようになった。お偉いさんの制服なり、ビジネススーツなり、役職階級章なり……転送中にそれらが身辺から剥き出されてほぼ裸状態になったのさ。あんたら、転送中にそんな光景見てなかったのか?」 「転送中は無我夢中で自分のことしか集中してないから、そこまでは……」 「そんなことだろうと用意して良かったぜ」  陽灼け男が、手引きすると、部下らしき団体により、ロープで繋がれた拘束囚のような扱われた時の政治家や、現職の警官の男女たちが、半裸状態で引きずられていたのだ。 「はっはっはー!!無様な姿だな~、おい。ここでは、自由だ、自由なんだよ。何やってもな。国会やら裁判所やら警視庁やら存在しない世界で閉じ込められた暴力者を裁けると思ってんじゃねぇよ。ぶぁぁか!!」  陽灼け男は、罵声を吐き出して、拘束された彼らに向けて唾を飛ばした。 「何てヒドい……」  正義感の強い青年は青ざめた。  半信半疑派の善浪は、隠れながらも、暴力騒動の様子を窺っていた。窺うしか出来ないのが現状だ。それがコトから回避する方法だったから仕方がない。  スクリーンボードに表示された活動事項は絶対的でハッタリは一切ない。それを証明できるのは、タイムトンネルをくぐり抜けた感覚の体験をして転送出来たコトである。しかし、こんな無秩序な輩がのさばる環境内じゃ、誰もが拒み続けて、泣きじゃくる者さえも現れてくる。  一方、陽灼け男の一味らしき集団は、湿っぽい環境になったお楽しみの現場から立ち去る際に、一枚の布も無い状態の淫らな女性を御輿を担ぐみたいに運んでいった。  奴らの行き先はどこなのか?一体引き上げた場所とは……まるで不明である。別に、知る必要性があるかと思えば、なにも無いわけだから、気にするだけ損だと、誰しも思っているだろう。
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