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あれはそう、私がまだ凄く幼かった頃の話。
あの日、奴等が村にさえ来なければきっと私は家族と一緒にいられたのかもしれない。
「それじゃ、マテリィ。リリアのことを頼むわね」
「任せてよ!」
「ママ、行ってきます」
「あ、待って。マテリィ、リリア。これをつけていきなさい」
元気よく家を飛び出そうとする私と姉。
呼ばれて歩みを止め、振り返ればママの掌に乗っていたのは小さな星形のペンダント。
わぁっときらきら光るそれに心奪われ、差し出されたペンダントを手にした。
私と姉は顔を合わせるとお互いにとびっきりの笑顔を浮かべる。
「いい?それは絶対に肌身離さずいるのよ。もしそれを誰かに触らせて欲しいと言われても、渡さないこと」
「リリア、これ綺麗だね」
「ねー!凄く綺麗に光ってる」
「二人とも話を聞いてるの?」
「聞いてるよ。えっと…」
光るペンダントを目の前に興奮すると私と姉にママが口を尖らせる。
困ったような素振りを見せながら、必死に先程の話を思いだそうとする姉。
そんな姉の横で「誰に言われても渡しちゃ駄目なんだよ」っと呟けば「そうそう!それそれ」っと声を大きくして姉が答えた。
「マテリィはともかく、リリアがいれば大丈夫そうね」
「なっ…私だって覚えてるからね!」
「はいはい。じゃ、二人とも気を付けて遊んでくるのよ」
ママの言葉に機嫌を損ねる姉の横でひっそりと私は笑みを浮かべ、手中のペンダントをぎゅっと握った。
笑顔で送り出してくれるママに手をふりながら家を出ると生暖かい風が肌を撫でつけ、草木の匂いが鼻を掠める。
いつもと変わらない空の真下、私と姉は並んでいつものように歩く…っと、急に隣で何かが気になったのだろう姉が歩みを止めた。
「そういえばさっきママにもらったペンダント、首から下げられるようになってたよね?」
質問されたことに頷けば、姉は自身の持っていたペンダントを私の首へと下げた。
それを見習うように姉の首へと同じようにペンダントを下げる。
「お揃いだね」
「お揃い…うんっ!」
「リリア嬉しそうだね」
「嬉しいよ!お姉ちゃんとお揃いだもん」
首から下がるそれを見ながら笑顔でそう答えると姉も嬉しそうにはにかんだ。
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