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《バサッ……》
ほんの数センチの切れ目で、その何かは自由を手にして大きく伸び上がった。
「……翼か?いや……羽根か。」
まだ孵化したてのような柔らかい塊を静かに広げ、ボソリと呟きを漏らした。
「……蝉は空を飛べるもんな?
和美には翼がないからな。
……それが出たわけか。」
羽根を広げ終えて、さっきまで呆れ顔だった先生はその美しさに魅了されたかのように幸悦とした表情を浮かべていた。
「……蝉ってよくわかりましたね?」
少し力を入れて、背中に生えたばかりの羽根を動かしてみる。
だんだんと自分のものとなり、思い通りに動かせるようになっていく。
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