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薄暗い会場に着くと、トモちゃんと数人が手招きをして、席まで誘導してくれた。
「ごっめ~ん!」懐かしい顔ぶれ一人一人に向かってヒソヒソ声で謝る。
「リイ子は相変わらず~」みんなにちゃかされながらつがれたビールをグイッと飲み干す。
幸い同窓会は始まって間もなかったらしく、お料理も沢山残っていた。
同じテーブルの女子同士、話は尽きない。
ふと隣に座っている男子に気付く。
(あれ?誰だったっけ?)
でも確かに同じクラスだった!(でなきゃここにはいない)
「飲んでる~?」笑顔で彼のグラスにビールを注ぐ。彼も頷きながらビールを空ける。
「おっ?イケるねぇ」
そんなやりとりをしながらも私の中では(名前…なんだったっけ…)そんな失礼なことを考えていた。
そろそろ次のお店に移って飲みなおすことになった。
私はそこにきてようやく
「えっとさぁ…名前、なんだったっけ…?」
と彼にたずねた。
それまで私が投げ掛けた質問にポツリポツリと応えるだけだった彼が、初めてまともにこちらを見た。
「え!?」
思いがけず大きな声を出した彼。
他の同級生まで彼と私に注目してしまった。
「声、デカいよ、名前よ、名前!あんたの名前!」
口元に指を立てながら彼を制する。
彼は口を大きく開けて
「る・い」
と答えた。口パクで。
「あー!ルイ!」
確かにいた。ルイ。
目立ちはしなかったけど、部活も勉強も頑張っていた。
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