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「ランスちゃん、この緑色のぷにぷにしてるのって何?」
「それは“グリーンスライム”。積極的な攻撃手段を持たないから、あなたでも危険はないわ」
「こっちの赤いお花は?」
「“ベルヘラの花”ね。傷口に塗ると治りが早くなるわ」
「うわっ、今あっちの木の隙間を小さい何かが通り過ぎていったよ」
「きっと“コボルト”かしら。力は人間より少し強いくらいだけど、彼らは臆病だから自分から戦ったり襲ったりはしないわ」
「えっと、じゃあじゃあ……」
ユウは見るもの聞くもの全てが真新しく、あらゆるものに興味をひかれてウロウロしている。
ランスは彼女に引っ張られる形で、際限ない彼女の質問に一つ一つ丁寧に答えていく。
その様はまるで仲の良い姉妹のようだなと、一歩後ろに下がった所にいるシルヴァリオンは彼だけ日頃と変わらぬ笑顔を浮かべながらそう思った。
そもそもランスロットは、他人の言葉に左右されない存在であった。
誰かの頼みを聞くことや質問に答えることなど本来はありえなく、ましてや誰かと一緒に行動することなど、召使いとして長年唯一共に生活することを許された、シルヴァリオンにとってさながら青天の霹靂であった。
「ユウさんが来てから変わりましたね」
誰にも聞こえないくらいの大きさでそう呟き、柔和な微笑みを続けた。
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