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執事は一杯目に注いだのと同じティーポットを使い、二杯目を注ぎ出す。
当然そこに主の注文した紅茶は入っているはずもないのだが、注がれたカップには特有の柑橘系の香りが漂うアールグレイが確かに注がれていた。
「ありがと、シルヴァ。ところで頼んだ私が言うのもなんだけど、それって魔力の無駄使いじゃないかしら」
「いえ、そんなことはありません。我が主、ランスロット様を待たせる時間それこそが無駄なのです。その無駄を省くために使用したこの魔力はとても有用に働いたと言えましょう」
「……時間なんて私にとって価値のあるものだとでも?」
そう言い少女─ランスロットはつまらなそうに二杯目に口をつけた。
見た目は10歳前後、輝く金色のクセのある髪を短く切ったその容貌には、幼さというより妖しさというものが宿っている。
一方、シルヴァと呼ばれた長身の執事─本名シルヴァリオン─は見た目成人男性、銀髪を目元まで伸ばしている。
彼の顔には長髪でも隠しきれない程の大きな古傷が左頬に三本走っている。
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