今となっては。

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秋葉学園中等部の入学式。 小学生のころは面倒に思っていた校長先生の話も、このときだけは妙に背筋がのびて。 いつもの倍以上に長い校長先生の話も終盤にさしかかったとき、 ………コツン…ッ…… ふと右肩に重みを感じて、首をひねるととなりに座っている女の子が、気持ち良さそうに寝息をたてていた。 さすがにこの体勢が続くと恥ずかしいので、起こそうかと思ったけれど。 あんまり綺麗な顔して寝ているもんだから、ついつい見とれてしまったんだ。 名前も知らない彼女の息づかいも、髪から香るシャンプーの匂いも、長い睫毛も。 そのすべてが、まだ幼かった俺を困らせて。 心臓が張り裂けそうだ。なんて、本気で思った。
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