153人が本棚に入れています
本棚に追加
絵里は、黒いゴミ袋を三枚重ねて口を広げた。
掃除機を持ち上げ、ボタンを押して下部のタンクを開けた。
金属片や木片に混じって、赤黒い塊と液体が袋に落ちた。
使い捨てのゴム手袋をはめた絵里は、ウェットティッシュでタンク内を何回も綺麗になるまで拭き取り、手袋と一緒に袋に入れると口を固く縛った。
通勤用のバッグを肩に、ゴミ袋を片手に、玄関でパンプスを履く。
振り向いた絵里は、爽やかな笑顔を浮かべていた。
「行ってくるわね、ムーちゃん。お留守番お願いね。」
ドアの鍵が閉まる音。
無人の部屋の中、掃除機は新たなゴミが認識されるまで静かに沈黙していた。
終.
最初のコメントを投稿しよう!