家電 『ムーン』

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絵里は、黒いゴミ袋を三枚重ねて口を広げた。 掃除機を持ち上げ、ボタンを押して下部のタンクを開けた。 金属片や木片に混じって、赤黒い塊と液体が袋に落ちた。 使い捨てのゴム手袋をはめた絵里は、ウェットティッシュでタンク内を何回も綺麗になるまで拭き取り、手袋と一緒に袋に入れると口を固く縛った。 通勤用のバッグを肩に、ゴミ袋を片手に、玄関でパンプスを履く。 振り向いた絵里は、爽やかな笑顔を浮かべていた。 「行ってくるわね、ムーちゃん。お留守番お願いね。」 ドアの鍵が閉まる音。 無人の部屋の中、掃除機は新たなゴミが認識されるまで静かに沈黙していた。 終.
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