153人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日も、また次の日も、絵里が出掛けると政司は掃除機に当たり散らすようになった。
「妻が、自分よりも掃除機を大事にしている」のが気に入らない理由だ。
そのことで、掃除機購入から10日目の夜、二人はとうとう喧嘩をした。
「そんなに掃除機がよけりゃあ、そいつと結婚しちまえ、機械女!!」
「一日中酒浸りで働きもしないあなたよりマシよ!!あなたはクズよ!!この家のゴミ以下よ!!」
そう言うと、絵里は寝室に逃げ込み、内側から鍵をかけた。
いつの頃からか寝室は別々になっており、さらに夫を疎ましく思う絵里はドアに鍵をつけ、夫に入ってこられないようにしていた。
絵里は、夫婦仲がこじれて以来必需品となった睡眠導入剤を飲むと、ベットに入り、明かりを消した。
その口元は、三日月のように。
笑っていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!