たとえそれが罪だとしても

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 きみがすき、だから――  校舎裏。十二月の放課後ともなると、さすがに日陰は寒いな、明日からカーディガンだけじゃなくマフラーも巻こうか、などと、目の前にある現実から目を逸らしていた。  ――付き合ってくだしゃいっ。  噛んだことだけは、バッチリ聞き取った。その赤面も、眼球の奥、網膜にしかと焼き付けた。  やだもう……などと、普段はきゃいきゃいと騒いでいる一団の一部を成しているハスキーヴォイスが鳴る。それを耳朶に通しつつ、改めて面を突き合わせる。  黒とも茶ともつかない中途半端な髪色。長さこそ肩でじゃきりと揃えられているけれど、しかしその長すぎる前髪は特徴というよりも没個性だろう。  だが、彼女がそれを善しとして――自身の面を隠すその行為をして――いるその理由を、唯一知っているのは、彼女の肉親以外ならば、彼女の告白を受けた者だけが知っている。  だめ、かな……?  髪をブラジャー代わりにしているグラビア写真やアダルトビデオは知っているが――それはいっそカーテンといって差し支えないほど、彼女元来の(そしてコンプレックスであるらしい)かんばせを包み込んでいる――秘部を隠す以上の意味を、つい勘ぐってしまうほどの長さを誇る彼女の前髪の向こうから、小さくも、しかしはっきりとした光が、対面している人間を差す。  だめ、だね。  僕は小さくも、しかし明確に告げた。  その言葉は、彼女を傷つけるに足る言葉で、  その言葉は、僕が傷つけるには十分すぎて、  しかしそれ以上に、  ――じゃあ、仕方ないね。  その声は、正面からではなく、真横から……より正鵠には、真横よりもやや後ろ、視界を扇に見立てて、かつそれの前後を入れ替えた端から、耳朶を刺激する。  そこで、僕という「存在」は途絶えた。
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