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「のび太くん、ちょっとこっちに来て」
ドラえもんは居間へ進むと、こちらに向かって手招きをした。
「う、うん」
ドラえもんに続いて居間に入ると、居間は変わり果てていた...までとはいかないが、少し変わっていた。
入り口から見て、まず正面に小さなテーブルがあり、周りに座布団が敷かれている。そして左側の奥に点けっぱなしのテレビがある。ここまでは前と変わらなかったが、違ったのは庭へと続く扉だった。そのガラス戸の姿は、ぎっしりと並べられたタンスによって塞がれていた。
「このタンスは・・・」
あまりの変貌に、思わず口を開いてしまっていた。するとドラえもんがのび太の疑問に答えてくれた。
「庭からの侵入を防ぐために、ジャイアンがタンスを動かしてそこに置いてくれたんだよ。外は見えなくなるけど、これで当分は大丈夫だと思う」
説明を終えるとドラえもんはテレビへと歩き、さらにのび太を呼び寄せた。おそらくテレビでこの状況が全国で放映されているのだろう。
どんな映像が映るのかと期待と不安を半々にして、テレビへ顔を近づけた。
――はっきり言うと、どれも悲惨な状況だった。
あるチャンネルでは司会者が深刻な顔でこの状況を話し、またあるチャンネルではリポーターが街中で街の状況を説明していた。時折聞こえる悲鳴や爆発音。それに炎上している車や建物は、まさに一度は映画で見たことがあるようなシーンだった。
「・・・・・・・・・」
のび太は唖然として画面を眺め続けていた。すると画面が変わり、外国の様子が映され始めた。やはりこの騒ぎは狭い範囲ではなく、世界規模で起きているようだった。あまりにも話が大きすぎて眩暈がしそうになったが、なんとか堪えた。
「今、スネ夫君と静香ちゃんが台所で荷物の整理をしてるんだ。しばらくしたら、のび太君も手伝ってほしいんだけど・・・」
「うん、分かった。もう少ししたら行くよ」
「・・・うん」
今の気持ちを察してくれたのか、ドラえもんは居間を出ていった。
そしてのび太はテレビのスイッチを押し、電源を切った。
体全身から力が抜けていくような気がした。しかし、皆は頑張っているのに一人だけここでぐったりとしている訳にはいかなかった。力を入れて起き上がり、のび太は廊下へと向かっていった。
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