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「後ろだ!」
自分に向けて発せられた声に瞬時に反応し、銃を肩と同じ高さに構えながら身体を180度回転させる。すると視界に、《奴ら》。もとい感染者が映り込んできた。
どうやら男性のようで、ボロボロで血の染みついた作業服を着ていた。《奴ら》になる前は工事の仕事をしていたのだろうか。
「アァァ・・・」
奇妙な呻き声をあげながら、ソレはゆっくりと近づいてきた。
銃口を頭に向けて、狙いを定める。自分と標的との距離は約3メートル。よほどの事がない限り、相手の攻撃範囲に入ることはない。
「ウアァァァ・・・」
「・・・・・・」
よく思えば、まだこの町に帰ってきてから3時間も経っていない。それなのに馴染んだ部屋に足を踏み入れたのがとうの昔のように思えてくる。
不思議な感覚に捕らわれながら、5発入りのリボルバーの引き金に手をかける。例え実銃でも、慣れてしまえばこっちのものだ。
最初は多少戸惑ったが、なんとか短時間でコツを掴むことができた。
それも生まれつきの才能のおかげなのか、火事場のなんとやら、なのかは分からない。
神経を集中し、引き金を引く。
パァン!!
乾いた音が灰色の空に響いた。見事に命中。
短い呻き声を上げながら真後ろにのけ反っていった元人間は、固いアスファルトの上になす術もなく倒れ込んだ。
「よし、急ぐぞ」
警察官の男、高野さんが自分たちを手招きする。
視覚がほとんど無い《奴ら》は、逆に臭覚と聴覚が優れている。なので大きな声を出すことはもちろん、銃を撃つなどという行為は《奴ら》にここにいますよ~、と言っているようなものだ。急いでここから離れる必要がある。
警察官、少年、ロボット...
この奇妙(?)な3人組は、目的地である『学校』へと向かうため、その場を後にした。
たった3日、バカンスを終えて帰ってくると、既に町は地獄と化していた。死んでもなお蘇り、生きている者達に襲い掛かる。まるでよくあるパニック映画のようだ。
そしてすべての始まりは、およそ2時間前にさかのぼる・・・。
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