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「───だがその責任とやらを履き違えるな……。
……責任つぅのは決して、周りの目を気にして全うするもんじゃねぇ。
隊を背負ったからと言って、善いことだけすりゃあいいってもんじゃねぇんだよ。」
芹沢の話は諭すような口調でもあり、また意見を交換する時のような口振りでもあった。
不思議とその言葉は、スッと近藤の心に流れ、何の違和感もなく馴染んだ。
「……俺はなぁ、近藤。」
ふと、芹沢の帯びる雰囲気が変わった。そして続ける。
「自分が、その責任は全う出来なかったさ……。
──大分前に俺には、責任を取ることは出来ないと知った。
同志たちの道を、責任を持って幸せに出来ないと思った、……いや、諦めた。」
そう言う芹沢は決して自嘲するようではなかった。
「……だから己は、
────如何なるときでも同志と共に、それより先に居ようと決めた。
皆が悲しむときはその倍を、俺がその同志の代わりに悲しむ。
皆が怒り憎むときは、代わりにそいつを殺める。
同志の負を己が背負うと決めた。……俺は上には立てねぇ。」
喉を、……失った。
芹沢という男の覚悟を目の当たりにした近藤には、もはや声など必要なかった。
その芹沢の覚悟は、……犠牲。
「……近藤、俺はお前なら上に立てると、──判る。」
不意の言葉に、思わず近藤は芹沢を凝視してしまった。
「なにを言う……買い被りだ。」
消え入るような声が近藤の口から出た。
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