一、 入隊

3/19
前へ
/158ページ
次へ
「土方さぁーん! 連れて来したよ。」  そしてなんと、人を連れてきた。  この爽やかで、長身でなければ性別を間違われる女顔の少年は、沖田総司(おきたそうじ)だ。  その剣の腕前から、壬生浪士組でも一目置かれる少年だった。 「本当か! って……──おい総司ちょっと来い。……誰でも良いわけじゃねぇぞ。」  目を輝かせた土方だったが、沖田の連れてきた人物を見た途端、落胆して沖田を呼び寄せた。  そして改めて沖田の連れてきた人物を見た。  沖田が連れて来たのは幼い顔で背も低く、見ようによっては女性にも見える色白の少年だった。  結わいた髪は肩に付くか付かないか程度の長さで、色素は薄く、光の反射で茶色く見えた。  ……そして腰には少年に不釣り合いな黒い鞘の刀がさしてあった。 「てめぇ、あの餓鬼……何処から連れて来た…?」  その普通とはかけ離れた少年のただならぬ気配に、土方は沖田に訊いた。 「道に迷った様子だったんですけど、話してみれば隊士募集に行くと言うので連れて来ました。  ──何人も斬った手練れであることは間違いありませんよ。」  沖田は挑戦的に土方を見た。口元は弧を描いている。 「何人も、ねぇ……。お前な、何も俺は人斬りを入れたいわけじゃねぇぞ。」  土方は沖田に釘を刺すと、続けて言った。 「そこまで言うなら……使える人間かどうか、──お前が確かめてみろ。」
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加