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「土方さぁーん! 連れて来したよ。」
そしてなんと、人を連れてきた。
この爽やかで、長身でなければ性別を間違われる女顔の少年は、沖田総司(おきたそうじ)だ。
その剣の腕前から、壬生浪士組でも一目置かれる少年だった。
「本当か!
って……──おい総司ちょっと来い。……誰でも良いわけじゃねぇぞ。」
目を輝かせた土方だったが、沖田の連れてきた人物を見た途端、落胆して沖田を呼び寄せた。
そして改めて沖田の連れてきた人物を見た。
沖田が連れて来たのは幼い顔で背も低く、見ようによっては女性にも見える色白の少年だった。
結わいた髪は肩に付くか付かないか程度の長さで、色素は薄く、光の反射で茶色く見えた。
……そして腰には少年に不釣り合いな黒い鞘の刀がさしてあった。
「てめぇ、あの餓鬼……何処から連れて来た…?」
その普通とはかけ離れた少年のただならぬ気配に、土方は沖田に訊いた。
「道に迷った様子だったんですけど、話してみれば隊士募集に行くと言うので連れて来ました。
──何人も斬った手練れであることは間違いありませんよ。」
沖田は挑戦的に土方を見た。口元は弧を描いている。
「何人も、ねぇ……。お前な、何も俺は人斬りを入れたいわけじゃねぇぞ。」
土方は沖田に釘を刺すと、続けて言った。
「そこまで言うなら……使える人間かどうか、──お前が確かめてみろ。」
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