一、 入隊

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「早かったですね。防具はいらないんですか。」  沖田は永倉が引き受けたのを確認すると、佐井の正面に立ち、言った。 「はい。」  佐井は短く答えた。 「そろそろ試合を開始する。俺は審判の永倉だ。」  沖田と佐井の様子を確認した永倉は、二人に言う。  そして沖田と佐井が距離を取る。 「怪我はしないよう気を付けろ。……それでは両者、構えろ。」  永倉は忠告し、合図を出す。  沖田は竹刀を中段に構えた。同じく佐井も中段に構える。  静かさと緊迫した空気が流れる。  沖田は佐井の表情を見、少しだけ困惑した。  今まで感情を出さない顔というのは見てきた上に自分でも出来る。だが、“無表情”というのはなかなか出来ない。  佐井は無表情だった。試合の前の緊張も気合いも何一つ見受けられない。  そして────、 「始め!」 試合開始の合図が出された。
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