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「早かったですね。防具はいらないんですか。」
沖田は永倉が引き受けたのを確認すると、佐井の正面に立ち、言った。
「はい。」
佐井は短く答えた。
「そろそろ試合を開始する。俺は審判の永倉だ。」
沖田と佐井の様子を確認した永倉は、二人に言う。
そして沖田と佐井が距離を取る。
「怪我はしないよう気を付けろ。……それでは両者、構えろ。」
永倉は忠告し、合図を出す。
沖田は竹刀を中段に構えた。同じく佐井も中段に構える。
静かさと緊迫した空気が流れる。
沖田は佐井の表情を見、少しだけ困惑した。
今まで感情を出さない顔というのは見てきた上に自分でも出来る。だが、“無表情”というのはなかなか出来ない。
佐井は無表情だった。試合の前の緊張も気合いも何一つ見受けられない。
そして────、
「始め!」
試合開始の合図が出された。
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