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姉の亡き後、俺はナオを引き取り北九州へ戻った。
2DKのアパートでナオとの生活が始まり、初めての冬。
近所の銭湯へ連れて行くと、ナオは随分とはしゃいでいた。
見慣れない世界が楽しいようだ。
「ナオ、頭洗ってやるからおいで」
はあいと元気よく返事をしてから、ちょこんと椅子に座った。
小さな背中にそっと手をあて、目をつぶってなと声をかける。
「お父さん、背中洗ってあげる」
小さな子供の声がして視線をむけると、少し離れた洗い場で、子供が父親の背中を流していた。
「孝ちゃん、背中洗ってあげる」
見下ろすとナオがくるりと振り向き、大きな瞳で俺を見上げていて。
あの子を見たのか、と笑いがこぼれる。
「うん、じゃあ先に頭洗おうな」
ナオは嬉しそうに笑った。
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