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帰り道。
手を繋ぎ並んで歩きながら、2人で夜空を見上げた。
「きれいだねえ」
ナオは上を向いたまま、俺の左手をぎゅうと握る。
白い息が夜空へ吸い込まれていく。
「そうだな」
東京の空とは全く違う。
でもそれだけじゃない。
握り返した小さな手は温かく、俺の心を優しく包んでくれるように思えた。
「お父さんと、お母さん。どこにいるかなあ」
「ん?」
「お母さんがね、お父さんは星の中にいるよっていつも教えてくれたから」
「……そうか」
「お母さんきっと、お父さんの隣にいるよね」
どこかなあ、と目をこらすナオの横顔を見つめる。
「ナオ、じゃあもう少し近くにいくか」
「え?」
屈み込み、小さなナオを肩車して立ち上がると、頭上で嬉しそうな声が聞こえた。
「うわぁ、すごおい!」
落ちないように、小さな足をしっかり掴む。
「風邪引くから、早く帰ろうな」
「うん!」
俺の頭にしがみつきながら、空を眺めているんだろう。
冬の空に立ち昇る白い息と一緒に。
ナオの心もきっと、姉に届くだろう。
<おわり>
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