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花見客で賑わう夜の桜並木を歩きながら、万優さんは嬉しそうだ。
「凄いね、満開の桜」
踊るような足取りで歩く姿は、まるで。
「あ、青木くん。熱燗! ワンカップ売ってるよ。買お」
「……ですよね」
ワンカップを手に、桜色に頬を染める彼女は、まるで。
「あ、青木くん。じゃがバター!」
「買ってきます」
あなたが望むものなら、なんでも。
「わあ、ありがと! 半分こしようね」
この笑顔。
今この瞬間は確実に、俺だけのもの。
にやけ顔を必死に隠しながら、ヒールで歩く彼女が転ばぬよう、足元に気を配る。
「万優さん、前見て歩かないと……」
言ったそばからよろめいた彼女を、慌てて後ろから抱きとめると。
「あっつ!」
熱燗をこぼされた。
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