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◇◇◇
結論からいうと、俺は七夕祭りを吉川さんと歩いている。
まさかの浴衣姿に、正直心臓が飛び上がった。
「凄い数の短冊だね」
大きな笹に沢山の短冊。
近所の子供達が書いたんだろう。
見上げる彼女の横顔は、昔とちっとも変わっていない。
高校時代を思い出す。
彼女はいつでも笑っていた。
カラン、コロン。
下駄の音が響く。
気付けばメイン通りを抜け、人通りもまばらになっていた。
「あそこに座って食べよ」
吉川さんは先程買ったタコ焼きと缶ビールを手に、神社の石段を指差した。
「久々の再会に、乾杯!」
美味しそうにビールを飲む人だなと、彼女を眺めながらタコ焼きを口に入れた。
「水木くん、結婚しないの?」
突然の質問に、思わずむせる。
「いや、彼女もいないし」
「そうなんだ?」
「仕事忙しいし、ひとりが気楽」
俺のつまらない回答に、彼女はそっかぁと呟き、缶ビールを一口飲む。
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