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ほら、と履歴書を返され、ため息をついた。
「目は通したけど、どうだか。文字が小さくて気に入らない。写真も暗いし、やる気が感じられない」
「うわ、凄いネガティブ。丁寧で綺麗な字じゃない。写真は画像が暗いだけよ」
呆れ顔の万優を一瞥し、一服しようと立ち上がった瞬間、名前を呼ばれた。
「郡司さん、面接のかたがお見えに」
30分も早いじゃねぇか。
俺の喫煙タイムをどうしてくれる。
待たせてやろうかと身を乗り出し、面接希望者の後ろ姿を見つける。
グレーのスーツ姿でなければ、子供と間違えたかもしれない。
頭も肩幅も身長も、何もかも小さい。
大丈夫なのかと、軽く目眩をおこしかけたが、ひとまず面接はしておくかと、声をかけた。
「綾香ミツルさん? こちらへ」
「は、はいっ」
勢いよく振り向いたチビッコは、驚くべき事に、何もない場所でつまづき、倒れてきた。
マジかよ。
だめだ。
こいつは100%、鈍臭い。
出会い頭から抱き留めた女は初めてだ。
泣きそうな顔をしているチビッコを見下ろしながら。
一から育てるのも悪くないかと、思い始めていた。
<終わり>
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