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彼はいつも誰かに囲まれていた。
だけどいつも独りだった。
それに気付いたのは、いつからだろう。
眠っている彼の唇にキスをして、その寝顔をじっと見つめる。
やがてうっすらと瞼を開き、私を見つめながら額に左手をあて、静かに口を開いた。
「……葵羽。また勝手に入ったな」
「勝手じゃないもん、おば様が通してくれたもん」
反論もそこそこに、彼の隣へ潜り込む。
「お前な……俺の寝込みを襲うのもいい加減にしろ」
「じゃ今日こそ、相手して?」
背中に腕を回し抱きついた私を、彼は大きく伸びをしてから非情にもアッサリと引きはがした。
「ひどーい!」
抗議の声を上げた私を一瞥した後、身体を起こし溜息をひとつ。
「だからなんでシャツ開けてんだよ、閉めなさい」
「修ちゃん、新しい彼女ともう別れたでしょ。ねぇ、葵羽を彼女にして」
「ない」
「なんで」
私のシャツのボタンに手をかけ、丁寧にとめながら、彼は目を細めた。
「ちょーこは、妹」
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