21人が本棚に入れています
本棚に追加
奉公に出て四年。
そして、そのまま腕を買って頂いて、居続けて三年。
体調を崩すことも、寝坊することもなく、無駄口もせず、博打に走ることもなく、真面目に毎日働いた。
一月に一度は必ず届く田舎からの文に、末の弟も近くの問屋へ奉公に来ているので、寂しくはない。
ある日、
職人気質が残る口調で、ご隠居様がおっしゃった。
「ご苦労さんのとこ、呼び出しちまって悪かったな。
話しってもんは、堅苦しいもんじゃねぇ。
足を崩して聞くと良い。
店もこの時期になると、ちったぁ暇が出てくるのは、おめぇも分かってんだろ?
ならよ、おめぇにも暇を出してやろうと思ってな。
なぁに、暇って言ったって、首切りじゃねぇ。
おめぇが好きなだけ、休みをとりゃあいい。
他の奴等は、自分から休みをくれって言ってくるが、おめぇは今の今まで勝手を言ったこともねぇ。
たまには、羽を伸ばすといいぜ」
.
最初のコメントを投稿しよう!