風呂敷

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奉公に出て四年。 そして、そのまま腕を買って頂いて、居続けて三年。 体調を崩すことも、寝坊することもなく、無駄口もせず、博打に走ることもなく、真面目に毎日働いた。 一月に一度は必ず届く田舎からの文に、末の弟も近くの問屋へ奉公に来ているので、寂しくはない。 ある日、 職人気質が残る口調で、ご隠居様がおっしゃった。 「ご苦労さんのとこ、呼び出しちまって悪かったな。 話しってもんは、堅苦しいもんじゃねぇ。 足を崩して聞くと良い。 店もこの時期になると、ちったぁ暇が出てくるのは、おめぇも分かってんだろ? ならよ、おめぇにも暇を出してやろうと思ってな。 なぁに、暇って言ったって、首切りじゃねぇ。 おめぇが好きなだけ、休みをとりゃあいい。 他の奴等は、自分から休みをくれって言ってくるが、おめぇは今の今まで勝手を言ったこともねぇ。 たまには、羽を伸ばすといいぜ」 .
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