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ぞく、と背筋に悪寒が走る。 ただただ恐怖だけが僕に押し寄せた。 美夜。 その白くて細くて、生暖かくまとわりつく腕を離せないまま呆然と立ち尽くしていると、美夜が顔をあげた。 「りっくん……?」 薄暗くてよく見えないが、虚ろな瞳が僕を捉えようとしているようだ。 「おかえりいー」 にっこりと微笑む美夜に、なんとも形容し難い感情が僕の中から溢れ出てこようとする。 いつものように。 「また、やったの?」 自分の声が驚く程に無機質。 「えぇー?りっくんが悪いんだよぉー?」 そう言って、掴まれていない方の腕を僕の首の後ろにまわす。 「早く帰って来てねって言ったのに、帰ってこないんだもん。みーちゃん待ちくたびれちゃったよぉ」 学校ではみんなの人気者。生徒会書記を勤め、仕事もそつなくこなし、明るく無邪気な美夜の普段からは想像もつかないような甘ったるい声を聞いた途端、心に鳥肌が立った。
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